那由多の映画ブログ

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北野武監督の初監督作品 『その男、凶暴につき』

こんにちは。

那由多です。

 

2記事前に北野武監督の『HANA-BI』について取り上げたものがあります。

 

その記事の中で、「せっかく日本人なんだから北野映画を全部見よう」と書いたので北野映画レビュー第2弾です。

 

今回は北野武監督が監督デビューした作品の『その男、凶暴につき』です。

 

北野映画の流れを決めた『その男、凶暴につき

HANA-BI』でも書きましたが、北野映画は暴力的と言われます。

 

確かに北野映画では暴力が渦巻いています。

 

登場人物も頻繁に死にます。

 

そして『その男、凶暴につき』でもその要素はあります。

 

というか、『その男、凶暴につき』から北野映画は始まっているので、この映画から「北野映画は暴力的」という流れができています。

 

しかし、この作品は1989年という昭和と平成の移り変わりの時期に公開され、日本全体は大らかな時代です。

 

ちなみに『その男、凶暴につき』の3年前に北野武さんは「フライデー襲撃事件」を起こしています。

 

フライデー襲撃事件」は写真週刊誌の「フライデー」の強引な取材手法に対して北野武さんが怒ったことがきっかけで起こります。

 

当時39歳の北野武さんには妻以外に親密にしていた21歳の専門学校生がいました。

 

「フライデー」は取材のために愛人の専門学校生の顔にテープレコーダーを突きつけたり手を引っ張ったりしてケガをさせました。

 

自身が大事にしている女性を傷つけられて北野武さんは怒り、「フライデー」を襲撃します。

 

現代なら不倫の段階で総叩きにあいます。

 

後に「フライデー」の取材が強引でひどいことがわかっても両者炎上といった感じになると思います。

 

しかし北野武さんは暴力という手段で写真週刊誌の会社に乗り込みます。

 

普通そんな問題を起こしたら全ての仕事がなくなります。

 

なので普通なら保身のためにひどい取材を受けても謝罪してしまうかもしれません。

 

ただ北野武さんは保身には走らなかったということですね。

 

時期的にそんな北野武さんが『その男、凶暴につき』という映画を作ったら、ちょっとリアルさがありすぎます。

 

しかしその私生活とリンクしている所や、全く隠そうとしない姿勢はとても評価できるなと思います。

 

そして「フライデー」を一緒に襲撃した「たけし軍団」と呼ばれる当時若手芸人が数人いました。

 

襲撃が終わったあと、北野武さんは「土方になってもお前らは一生食わしていくからな」と言っていたようです。

 

義理人情がある人物なのがよくわかります。

 

映画としてはビートたけしさんが演じる、怒ると問題行動を起こしてしまう刑事が自身の最愛の妹を傷つけられ、良くしてくれた同僚も殺されてしまい仇討をしようとする内容です。

 

そしてラストは、現実が直視できず…という感じですね。

 

魅力的なキャラクターを描き切る北野映画

その男、凶暴につき』の中にはビートたけしさん演じる刑事の最大のライバルになる暗殺者がいます。

 

この男は「殺人がとにかく好きな男」という描かれ方をします。

 

しかし同性愛者です。

 

この設定は現代ではたぶん何も驚かないものです。

 

というか、今は同性愛者や有色人種を作品に入れるなどポリコレに配慮した作品が増えています。

 

なのでストーリーに関係ないのに同性愛者や有色人種が入っていないといけない風潮になっています。

 

しかし『その男、凶暴につき』の時代にはそういったものがありません。

 

なので単純にキャラクターをより際立たせるためにこういった設定にしています。

 

作品を純粋におもしろくするために精進できた時代の名残ですね。

 

ちなみに北野武さんが『その男、凶暴につき』の監督になったきっかけは、元々監督候補だった深作欣二さんのスケジュールが合わなかったからです。

 

そこで北野武さんのスケジュールに合わせて好きに撮っていいという条件で監督を依頼したということです。

 

時代が大らかすぎませんか。

 

こんな経緯があったので、映画の最後のスタッフロールでは監督は「北野武」名義、主演としては「ビートたけし」名義だったのかなと思います。

 

ちなみに芸人から後に映画監督と同様の経歴を踏む、ダウンタウン松本人志さんは北野監督の作品で一番好きな作品は『その男、凶暴につき』と発言しています。

 

北野武さんの一番キレッキレな時代の作品なのでぜひ見てみてください。