こんにちは。
那由多です。
今回は日本探偵小説3大奇書に数えられる『ドグラ・マグラ』を映画化した作品のレビューです。
僕は『ドグラ・マグラ』は3大奇書という、いかにも厨二病が喜びそうな呼ばれ方をしていたので気になっており、題名だけは知っていました。
なので小説は読んでいません。
映画は見たのでレビューできますが、小説に関しては薄っぺらい内容になってしまうことを先に断っておきます。
小説『ドグラ・マグラ』と映画『ドグラ・マグラ』
映画の『ドグラ・マグラ』は『呉一郎(くれいちろう)』という青年が主人公として話が展開します。
正確に言うと『一郎』は九州帝国大学医学部精神病科の病棟で目を覚まし、過去を全く思い出せず、最初は自分が誰なのかもわかっていません。
そこに『若林(わかばやし)』という法医学者が現れ、1ヵ月前に自殺した『正木(まさき)』という精神科医に変わって『一郎』がいる精神科も兼任することになったと言います。
映画版では『一郎』が主人公ですが、小説では『わたし』が語るように物語が進んでいくようですね。
この『わたし』が『一郎』と同一人物なのか?それとも第三者の人物と捉えるかで物語の印象が大きく変わるようです。
小説は本のカバーもかなり攻めたものになっており、毒々しく、ただ内容ととてもマッチしたものかなと映画を見て思いました。
そして映画の内容としてはまるで作者が精神病の人物の内部ではどういった光景を見ているのかを想像して描いたかのように支離滅裂なストーリーの進み方をします。
果たして今のシーンが夢で起きているのか現実として起こっているのかの区別がつかないといった印象です。
そもそも『ドグラ・マグラ』という言葉は映画内では「バテレンが使用する呪術の言葉」と紹介されていますがあまり意味もないようです。
そして作中に『ドグラ・マグラ』という言葉が出てきますが『正木教授』の研究室に置いてある小説として登場するだけでした。
何回か「ん?」となることを覚悟で見てもらえたらと思います。
映画の『ドグラ・マグラ』は1988年に公開されました。
かなり昔の作品ですね。
なので出演者の方で故人になっている方や第一線から退いている方もいます。
カメラワークも出演者をアップで撮影する時の手法は少し古臭さを感じますが、研究室を歩く出演者を追いかけて横に動きながら撮影している部分などはとてもスピード感があって良い感じです。
全体的に陰鬱な雰囲気があり謎が謎を産む展開ですがとても面白い作品だと思います。
原作の小説を書いた『夢野久作』さんは1935年に『ドグラ・マグラ』を出版しました。
『夢野久作』さんは『ドグラ・マグラ』を構想から完成までなんと10年間も費やしており、どういった意図で書いたものなのかを明確に説明できたはずです。
しかし『夢野久作』さんは1936年に亡くなっており、どういった意図で書かれた小説なのかが不明になっています。
また読破した者は気が狂うと言われます。
これが3大奇書と言われる所以ですね。
桂枝雀さんの名演
『正木教授』を演じるのが落語家の『故・桂枝雀(かつらしじゃく)』さんです。
『枝雀』さんは上方落語でとても人気があった方でダウンタウンの『松本人志』さんも「『枝雀』さんの落語の音源をよく聞いている」と発言しています。
『ドグラ・マグラ』は精神病を扱った作品ですが、『枝雀』さんは後年にうつ病を発症し自殺を図って亡くなってしまいました。
『枝雀』さんの「代書屋」という噺が個人的には大好きなのですが、『ドグラ・マグラ』の中での演技は代書屋に職歴を書いてもらいにきた依頼人そのものです。
あの威勢のいい声で精神病の患者に接する先生を演じています。
全体的に陰鬱な雰囲気の中で『枝雀』さんの演技はいいアクセントになっています。
演技もでき、落語も逸品だったのでもっと活躍して欲しかったですね。