那由多の映画ブログ

映画レビューや映画についてのちょっとしたネタを書きます

続・三木大雲和尚の怪談と共に楽しめる『冷たい熱帯魚』

こんにちは。

那由多です。

 

今回は前回の映画『冷たい熱帯魚』のアナザーストーリーについて書いていきます。

 

映画『冷たい熱帯魚』のレビューに関しては前回の記事をご覧ください。

 

冷たい熱帯魚』は実在の事件をベースに描かれています。

 

なので報道されている話と映画で描かれている部分が世に出ていますが、犯人も人間です。

 

普通に友人とお酒を酌み交わしたり、真面目に仕事をしたりということも当たり前ですがしています。

 

今回のお話は事件にもならない犯人の日常が垣間見れます。

 

そしてそこに登場する人は三木大雲(みきだいうん)という現役の和尚さんであり怪談師の方です。

 

若き日の三木大雲さんのお話

 

三木大雲さんは日蓮宗のお坊さんです。

 

日蓮宗は修行が厳しく、埼玉の熊谷で2年間、東京の谷中で2年間と修行を積む必要がありました。

 

この修行は朝から晩までぶっ続けで行う必要があり、精神力が鍛えられる代わりにストレスを多く受けます。

 

そこで癒しが欲しくなり近所にあった「アフリカケンネル」というペットショップで犬を撫でたり写真を撮ったりして癒しを求めていたようです。

 

すると男性に咎められます。

 

話してみると「アフリカケンネル」の社長をしている男性ということがわかりました。

 

この男性がどういった人物なのかは前回の記事を読んでいたらよくわかると思います。

 

男性は京都出身の三木大雲さんに「もしかして同郷か?」と尋ね、出身が同じという共通点がきっかけで男性と三木大雲さんは仲良くなりました。

 

そこで男性のオフィスに招かれ、三木大雲さんはコーヒーをごちそうになりました。

 

数本のコーヒーが目の前に並べられ、どれでも飲んでいいと言われたので三木大雲さんは1本のコーヒーを選んで飲みながら話しました。

 

男性は関西弁で話したいから「うちにバイトに来ないか?」と言います。

 

15分ほど犬を散歩させ、そのあと5~10分ほどオフィスで関西弁で話し相手になってくれたら月15万円という条件です。

 

これは破格すぎますよね。

 

ただ忙しい修行時代の三木大雲さんには魅力的な話です。

 

修業時代は寮に入りますが「寮長に確認します」と三木大雲さんは答えました。

 

相談した所、「そういった煩悩を断ち切るために修行をしている」ということで三木大雲さんは怒られ反省文も書かされました。

 

そして翌日、バイトができない旨を伝えに「アフリカケンネル」を訪れます。

 

この時も男性はコーヒーをごちそうしてくれました。

 

前日と同じように何本か缶コーヒーを目の前に置かれ、選んでいいという方法でした。

 

月日が経ち、埼玉での修業が終わって東京に移る時期になりました。

 

「アフリカケンネル」に挨拶に行こうと思い立ち、三木大雲さんはまた男性に会いました。

 

男性は別れを惜しみ、「また今度は関西で会おう」という餞別の言葉とともにまたコーヒーをごちそうしてくれました。

 

その時もコーヒーを何本か並べて「選べ」と言われて1本を選びます。

 

そして三木大雲さんがコーヒーを飲み切った所で「もう1本飲んでいけ」と言われます。

 

もうお腹がいっぱいだった三木大雲さんはこの言葉を丁重にお断りして「アフリカケンネル」を後にしました。

 

数年後、報道でこの時の男性が埼玉愛犬家連続〇人事件の主犯者だったということを知ります。

 

神様や仏様に守られている人はいると信じた死刑囚

 

この主犯の男性は極刑が言い渡されましたが、刑が執行される前に病気でこの世を去ります。

 

いよいよ病気が進行して死期が近づいた時、この男性に面会に訪れた友人がいました。

 

この友人に主犯の男性は「俺は神とか仏はいると思うんだ」と言います。

 

死刑囚が刑の執行前に神様や仏様にすがるように宗教にのめり込むということはよくあることです。

 

友人は気持ちが弱くなってすがっているのかなと思いました。

 

ただ主犯の男性は「そうじゃない」と言います。

 

続けて「昔埼玉にいた頃に若いお坊さんがオフィスを訪れたことがあった」と語り始めました。

 

「若いお坊さんは3回オフィスを訪れて、3回ともコーヒーをごちそうした」

 

「目の前にコーヒーを複数本並べ、1本を除いてあとは全て毒入りコーヒーだった」

 

「ただ、その若いお坊さんは3回とも毒が入っていないコーヒーを選んで飲んだ」

 

「最後にもう一本飲んでいけと言ったがそれも断って帰っていった」

 

「俺はな、神や仏に守られているやつっていると思うんだよ」

 

そう言ったそうです。

 

この友人はこの話の真偽を確かめていると埼玉の日蓮宗の寮に三木大雲さんが残した反省文を発見しました。

 

そして三木大雲さんに実際に会って、面会での主犯の男性の言葉が伝えられたということです。

 

驚いたことに主犯の男は京都の出身ではなかったようです。

 

ただ三木大雲さんが騙されるほど完璧な関西弁を使っていたようです。

 

三木大雲さんは神様や仏様はいるということや仏教を広めるために活動しています。

 

和尚さんなので当然の活動ですね。

 

そしてあの犯人ですら最期には神や仏はいると思ってこの世を去ったということを誇りに思ってこういった人怖な話や怪談を話しているそうです。

 

冷たい熱帯魚』のアナザーストーリーですが、こちらもとても魅力的な話だったと思います。

 

こういった事件にならない埋もれたストーリーもあったんだと頭に入れながら映画『冷たい熱帯魚』を楽しんでみてはいかがでしょうか。