こんにちは。
那由多です。
今回は北野映画を見てみようの第3弾です。
『HANA-BI』『その男、凶暴につき』に続いて今回は『菊次郎の夏』です。
この映画は『HANA-BI』同様、北野武さんが監督と脚本と編集を担当しています。
『その男、凶暴につき』は北野武さんが初監督をした作品で脚本と編集はしていません。
そして『HANA-BI』は1998年に公開で、『菊次郎の夏』はその翌年の1999年に公開されています。
なので映画としても洗練されています。
『菊次郎の夏』は第23回日本アカデミー賞で最優秀助演女優賞に岸本加世子さん。
最優秀音楽賞に久石譲さん。
そして日本スポーツ映画大賞主演男優賞にビートたけしさん、特別賞に井出らっきょさんが受賞しています。
ちなみに北野武さんは監督としては「北野武」名義ですが役者としては「ビートたけし」名義を使っています。
映画のエンドロールのクレジットも同様なので確認してみてください。
映画『菊次郎の夏』を見た感想
映画『菊次郎の夏』は今までの北野作品のように暴力が渦巻いているわけではありません。
まず銃が出てきません。
ただビートたけしさんが演じる主人公の菊次郎は絵に描いたようなダメ男で暴力的です。
この菊次郎がひょんなきっかけで正男という子供と知り合います。
この正男は祖母と暮らしており、父親と母親がいませんでした。
ただ死別したわけではなく祖母からは母親は仕事で遠い場所にいると言われていました。
『菊次郎の夏』の最初の舞台は浅草です。
正男は浅草から遠い愛知県に母親がいると知ってしまい、単身で母親に会いに行こうとします。
これを知った岸本加世子さんが演じる菊次郎の奥さんが正男を心配し、菊次郎に正男を愛知まで送ってあげることを提案します。
菊次郎のキャラクターは粗暴で子供はそこまで好きではなく正男のことはやっかい者のように思うタイプです。
しかしこの物語では正男と関わっていくうちに粗暴な菊次郎が少しずつ変わっていきます。
そして最初は心を閉ざしていた正男も少しずつ心を開き表情が豊かになっていきます。
菊次郎と正男の関係は、菊次郎が大人として正男を庇護するという関係ではありません。
菊次郎が正男に迷惑をかける時もありますし、正男を守るという時もあります。
そして正男が菊次郎を慰める場面もあります。
様々なシーンで2人の心情が変わり、ほんの数日を描いた物語ですが2人が邂逅し成長しているのがわかる作品だと思います。
そしてこの2人が愛知県に行く時に出会う人々が魅力的です。
たけし軍団からはグレート義太夫さんと井出らっきょさんが出演しています。
この2人がお笑いの番組で行うような体を張った芸を行いますが、これは言葉が通じない海外の人でもわかるおもしろさがあると思います。
この時、共演しているビートたけしさんは映画の中で自慢の弟子を披露しているような楽しそうな雰囲気を醸しています。
純粋に笑ってしまっているようで、撮影が楽しかったんだろうなという感じが伝わってきます。
そしてこの楽しい絡みは物語の底を流れる美しくも悲しいストーリーとの対比となっています。
さらに久石譲さんの音楽です。
この映画で流れる曲は後々CMなどで流れ、とても有名な曲になりました。
僕はこの映画を見て「この映画が初出だったんだ」と思いました。
そして久石譲さんも曲調と映画の内容が合ってないと思いながら曲を提供したようです。
ただ作品になってからストーリーとの対比で曲が活きたと感じたようです。
北野武さんの映画は映像の撮り方も随所にこだわりを感じる部分があって『菊次郎の夏』は個人的にはとても好きな作品でした。
ストーリーは美しく悲しい物語ですが、とても心が温かくなる作品です。
ネタバレを極力しないようにレビューしたので分かりづらくなってしまったかもしれませんが気になった方は見てみてください。