こんにちは。
那由多です。
今回は黒澤明監督が若い頃に出会い、一生の師と仰ぐようになった『山本嘉次郎(やまもとかじろう)』監督です。
この監督が作った作品で現在でも特集されるものはあまりありません。
無声映画の時代の監督さんなので現代で日の目を見るのは難しいと思います。
この監督の作品には「吾輩は猫である」があります。
夏目漱石の作品ですね。
「吾輩は猫である」は今まで2回映画化されていて、そのうちの1回を山本嘉次郎監督が描いています。
黒澤明監督が山本嘉次郎監督を一生の師と仰いだきっかけは
山本嘉次郎監督の方が年長です。
山本嘉次郎監督を一生の師と仰いだきっかけについては黒澤明監督の著書の『蝦蟇の油 自伝のようなもの』に書いてあります。
黒澤明監督が初めて書いた脚本を山本嘉次郎監督に見てもらう機会がありました。
内容は江戸時代の不良グループを描いた物語です。
物語中に主人公が江戸城の前に立てられた立て札を読んで仲間に伝えるというシーンがありました。
黒澤明監督は普通に主人公に喋らせて状況を説明する脚本を書きましたが、山本嘉次郎監督は「小説ならこれでいいけど、映画にはならないよ」と言いました。
そして山本嘉次郎監督は主人公に立て札を読んだあとに無言で立て札を引っこ抜かせ、仲間の所に持って行って見せるというストーリーに書きかえました。
これならセリフはいらず、勝手に立て札を引っこ抜くことで不良であることも伝わります。
映像がある映画ならではの改編です。
この改編を目の当たりにした時に「この人に一生ついていこう」と黒澤明監督は思いました。
のちに黒澤明監督が様々な賞を受賞した経緯を見るとすごい人に弟子入りしたということと、黒澤明監督の慧眼にも驚きます。
山本嘉次郎監督の作品もぜひ観てみてください。